アフリカ日記⑤

2018年06月30日 岡井雄介

2回吸って、1回吐く。
意識するのは1回目より2回目の方が大きく吸う。
呼吸が乱れるとたちまち立ち眩みのような感覚になる。
ここは標高5000m。
空気が地表の半分しかないので、呼吸と無理しない行動が大切だ。

0時から登り始めて4時間。
気温はマイナス。
まだ暗い。
キリマンジャロ頂上付近はとても静かで色の少ない世界。
月明かりの白、反射する雪の銀色、岩肌の黒。
時折吹く風、人の息づかい。

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水墨画のような世界を僕たちはひたすら進む。

リュックの中の水筒の水は凍って、自分の吐く息でフリースの襟元にも霜が付く。
健太も辛そうだ。

こんなにも太陽の光を待ちわびた事はない。

午前6時。
ようやく朝日が登る。

暖かい。
太陽が登るだけでこんなにも違うのか。
頂上はまだまだ先だが体から気力が湧いて来る。

午前9時
5756m
ステラポイントに到着。
頂上まではあと130m。

この頃から頭が少しクラクラしてくる。
昨日からの疲れと寝不足で軽い高山病か。

ただ、景色と天気は最高だ。
あたりは真っ白な地面、空は雲ひとつない濃い青。
キリマンジャロは頂上に近づくほど色は濃くなりシンプルになっていく。

ここからが長い。
ゆっくり一歩、一歩確実に足を前に出す。

午前11時26分
僕たちはキリマンジャロ最高峰ウフルピークに到着した。

健太の目から涙が流れていた。

健太がまず口にしたのは一緒に登った仲間への感謝の言葉だった。

僕たちは山の初心者だ。
登っている時に何故、人は辛い思いをして山に登るのかを考えた。
結局、それはわからなかった。
けれど、登頂して最初に出た言葉が一緒に登った仲間への感謝の気持ちなら、それがそのまま答えなんだと思う。

みんなで登って、リタイヤしてしまった人の気持ちも抱えて、登頂してそれを最高の感謝の気持ちで喜び合う。
それが僕たちが山に登った答えだ。

人間の技術力の発展は凄い。
けど、人間は歩いてもここまで来れる。
僕たちは最も原始的な歩くという方法を繰り返してここまで来た。

この旅が終わっても生きている限りは何かをチャレンジするだろう。

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不器用でもゆっくりでも諦めずに足を前に出して歩く事を繰り返せば、この高みに到達出来る。
それを山は教えてくれた。

5893m

これからも僕達は自分自身の足で登る。

それを誇りに思う。

キリマンジャロありがとう。

さて、下山だ。

帰ろう。

待ってくれてる人達がいる場所へ。

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2018年3月30日 キリマンジャロ頂上