『プロ根性』 ~それ、野村に聞いてみよ~!~
日野陽仁
立っているのもやっとの強風が吹く犬吠崎の突端でその撮影は行われた。
2歩先は間違いなく命がなくなる断崖絶壁。
何カットか収録した後、「日野さん、寒くないですか?!」スタンドインの方が体を震わせながら声をかけてくれた。
「いや、全然大丈夫です」と私。
「さすがプロ!仕事になると寒さも感じなくなるんですね」とスタンドインの方。
強がりではなく本当に寒くなかった。
私の肉体にも『プロ根性』のようなものが自然と身に付いていたのかも!と少し嬉しくなった。
次のカットのために再び崖に立った。
すると、それに合わせるように左の方でザザザッと何かが動いていた。
見ると、クライアントの方やメイクさん、手の空いているスタッフ全員が毛布やシートを手に持っている。
そして、各々位置がきまっているかのように立ち、その毛布やシートを広げた。
そこには出演者やカメラマン、照明さんなどのスタッフを守る人壁が見事に出来ていた。
ただ撮影を見守っているだけではなかったのだ。
感動した!
と同時に、
心頭滅却すれば火もまた涼し!
なんて域には、まだまだ到達出来ていない自分を悟りました。